楽しかったピアノ

楽しいからやっていたピアノ、楽しいだけでは終われなかったピアノ。

ピアノの発表会に向けて曲をもらって練習して。

まあ、練習よりも遊びたかったから手につかなくて発表会ではミスタッチの嵐だったけれど。

発表会で節目を迎えて、終わったあとは母さんいつも「まだまだ」って言うの。

そりゃ練習しなかったし当たり前なんだけれど。ピアノがなんかダメになってきたな、と自覚し始めた小学4年生の頃から、手放しにピアノを褒められたことが無い。

発表会が来るたびにもっと練習しておけばよかった、と思う。いつも後悔する。でも、頑張って発表会に出たのに、良かった部分もあるのに、「あそこは良かったけどここはダメだったよねー!」「もっと練習して!」「周りの子に負けないぐらい!」って、ダメなことで終わらせなくてもいいじゃない。自分が一番分かってるよ。本当にデリカシーが無いな。

褒められるためにピアノやってた訳じゃないけど、こんなに惨めな気持ちになるためにやってたわけでもない。

これが10年間、毎年続いた。

わたしの気持ち、考えたことなかったのかしら。

わたしのピアノって、何だったのかしら。

母さんにとってピアノをやってるわたしって何だったのかしら。

母さんはきっとわたしが完璧に弾かないと、周りの子と比べても負けない演奏をしないと、満足できないんだわ。

楽しくやりたいだけのわたしなんて、母さんの理想にはいなかったんだね。

ピアノが無くなったらわたしは何になるの?ってぐらい悩んでたのに、簡単に取り上げようとしたものね。

ちゃんと話し合いもしないで、勝手に全部決めないで。全部自分の思う通りに行くと思わないで。

わたしは母さんの娘だけど、操り人形じゃないんだよ。

早くわたしの中から全部、消えてよ。